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甘党だからあんこ大好き!
そう安易に言ってしまうことがあります。
しかし、餡の世界は想像以上に奥深いものです。
そもそも、餡とは何か。
豆や芋などを煮て砂糖を入れて練ったものが、餡子です。
最も基礎的なその餡子ですら、数多の種類があります。
豆を使ったものだと、小豆餡赤餡白餡うぐいす餡ずんだ餡。
小豆餡にはつぶ餡こし餡つぶし餡小倉餡など。
豆以外だと芋餡栗餡南瓜餡。その他さまざまな材料を使った餡。
いわゆる餡子だけでもこれだけの種類があるのです。
そして次に、ひき肉や野菜などを使った餡。
餃子などの点心に使われる具材も、餡なのです。
さらに、片栗粉を使ってとろみをつけた味付きの液体。
焼きそばを始めとした料理に使われる、餡掛け。
食べ物から逸脱したところでは、緩衝材やクッションなどの詰め物。
それらを総称して餡子と呼ぶらしいのです。
めくるめく餡の世界。
ルーツをたどると「餡」=「中に詰めるもの」。
つまり、どれも餡で間違いはないのです。
中に詰めてしまえば、全てが餡なのです。
しかしながら、ここで問題になる餡がひとつ。
中に詰めず掛けてしまうというダイナミックさを持つ餡掛け。
掛ける、つまり外へと飛び出す餡の登場です。
餡は中に詰めるものだが外に掛けても餡は餡。
そうなると、全てが餡ということになってしまいます。
中にあろうと、外にあろうと、餡。
甘くてもしょっぱくても、餡。
食べることができる、餡。
食べることができない、餡。
餡とはいったい何なのでしょうか。
餡と餡以外の境界線は徐々に曖昧になってきました。
餡は中に入り込み、餡は外を包み込む。
あなたの中に詰まっているものも餡。
あなたを取り巻く全ても餡。
餡によって人は動き、餡を摂取し、餡を楽しむ。
餡に取り囲まれ、餡をその身に宿す。
つぶとかこしとかそんな概念すら越える餡。
国籍も肌の色も、年齢も性別も、関係なく、餡。
全ては餡であり、餡が全てである。
世界は餡でできている。世界は餡でつながっている。
いつのまにか私達はそんな世界に生きているのかもしれません。
(桜田ケイ)