向真希 12時半~18時 ご予約枠は満席です!12時半~14時が当日鑑定枠です!
桜田ケイ 15時~20時 わりとのんびりと座っております!
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夏祭りの縁日には、子供が大人になるための通過儀礼がいくつも存在している。
少ないお小遣いから何にお金を使うべきなのかを考え、選び、成功や失敗を重ね、社会性を身につけていく。
ハレの日でもある夏祭り。子供のテンションは高まるため、思考はいささか安易になることも多く、くじ引きや射的などで見受けられる高位な商品に気を取られ散財してしまい、参加賞的な文具などを入手するだけで終わってしまう場合も多い。
食べ物であれば安心なのかといえばそうとも言えない。なにしろ子供の胃袋はそれほど大きくはない。ひとつの選択ミスがその後に大きく響いてしまうのである。
縁日における大きなトラップのひとつは、りんご飴である。
りんご飴。お祭りには欠かせない存在であり、ルビーの如く赤いリンゴを包み込む艶やかな飴の姿は、一目見た者の心をとらえるには十分に魅力的である。
経験値の少ない子供がその魅力に抵抗することは難しく、りんご飴をどうしても食べたいと思うのは何ら不思議なことではない。
しかし、それこそが罠。大きなりんごを包む飴は、いつまで舐めても終わることがなく、気が付けば指先はおろか手先までベタベタになってしまう。
りんごを丸ごと食べる機会などなかなか無い子供にとって、りんご飴というのは想像を越えた大きな存在であり、食べきれたところで次の食べ物に進むことは叶わない。
飴部分を舐め終えてりんごまでたどり着いたとしても、予想よりも酸っぱかったりすると目も当てられない。最終的には割りばしに刺さった茶色く変色しかけたりんごを手に、べたつく感触と共に途方にくれるばかりなのだ。
あの輝かしく屋台に並んでいたりんご飴。その輝かしさは手に入れた瞬間から確実に失われ、祭りを楽しもうと思う心の枷に変わっていくのである。
現在の屋台を見ると姫リンゴなど小さな品種を用いているようで、それほどの困難もなく食べ終えることができるだろうが、自分が幼少のころに初めて手に入れたりんご飴はあまりに大きく、手ごわかった。
夏祭りにおけるりんご飴は、子供に自らの限界を教えると共に、諸行無常の心を刻み込む。
禁断の果実を食べたアダムとイブがエデンの園から追放されたように、りんご飴を食べた子供は一歩だけ大人への階段を上るのである。
(桜田ケイ)